AHA公認インストラクターを目指すにあたり
ブレイブハートNAGOYAでは、アメリカ心臓協会AHAの BLSプロバイダーコースやハートセイバーCPR AEDコースなどを開催できる「BLSインストラクター」の養成を主に行っています。
詳細は後述しますが、BLSインストラクターになるには医療関連資格を必要とはしていません。
看護医や救急救命士といった医療関係資格を有する方が多いのは確かですが、ライフセーバー、集客施設の職員、警備会社の指導担当といった職業人のほか、高校生でBLSインストラクターとなった方も過去複数いらっしゃいます。
世界で通用する救助のプロ向けBLS(一次救命処置)スキル認証資格を発行できるBLSインストラクターですが、インストラクター資格取得自体はそこまで難しいものではありません。
しかし、その資格を本当に活かし、立場と権限を行使して社会に良いインパクトを与えられる存在になるためには、相当の苦労を要するかもしれません。
❚ AHA-BLSインストラクターの特性
質の高いBLSスキルと資格認証を必要とする職業人(看護師や救急隊員、ライフセーバーなど)に対するトレーニングを提供して対価を得る、ビジネスとしてのインストラクター資格です。決してボランティアベースの救命法普及活動の指導に用いる資格ではありません。
人の生命を預かる職業人に対するトレーニングを提供する立場には相応の責任が伴いますし、資格の維持にも費用(資格更新審査の費用や教材購入など)がかかります。
資格コレクションのひとつに…というスタンスで取得するようなものでもありません。
❚ インストラクターとしてのビジョン
AHA公認BLSインストラクター資格の取得を考えている方は、次の4つの質問にご自身で答えてみてください。
なかなか厳しい質問や解説に思えるかもしれませんが、インストラクターとして活動するには相当の時間や苦労、費用がかかります。
気軽に進むべき道ではない、真にその立場や権限が必要な方のみ進むべき道なのです。
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インストラクターになって何をするのか?
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インストラクター資格がなければできないことか?
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講習を提供する相手の見込みはあるか?(顧客ニーズ)
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必要な資源は確保できるか?
詳細は次のとおりです。
❚ 1. インストラクターになって何をするのか?
インストラクターという資格や立場は、あくまで何かを成し遂げるための手段でしかありません。
「自組織のXX部門スタッフ全員に医療者レベルでのBLSスキルを習得させるためにAHAの BLSプロバイダーコースを内製化する」というように、具体的に「何をするのか?」のビジョンを持っていることが必要です。単に「インストラクターに"なりたい"」というだけでは、立場を得たあとの活動は難しいものです。
また、「インストラクターになって勉強したい」という動機を持つ方も少なくありませんが、インストラクターになったから救命技能が高まることはありませんし、常に自己研さんが必要であり、誰かに教えてもらうという姿勢ではうまくいきません。勉強はインストラクターでなくても進められるものです。
❚ 2. インストラクター資格がなければできないことか?
救命法の指導自体は、関連知識や指導スキルを習得すれば資格は不要です。
例えば指導的立場となった看護師が、職場の後輩や新規入職者にBLSトレーニングを提供する場合に特別な資格はいりません。
AHAのBLSインストラクターとは、AHA公式のBLSプロバイダーコースなどを開催し、資格を発行するためであれば必要なものです。職場でのトレーニングを開催するにあたり、教え方を学びたいということであれば、
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ブレイブハートNAGOYAが開催するBLSプロバイダーコース(少人数制で、受講者の要望を踏まえたアレンジを加えるとともに、蘇生学の「なぜ?」を踏まえた解説に力点)
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ブレイブハートNAGOYAが開催する救命法指導者向けセミナーを受講
などで解決できるかもしれません。
職場でのトレーニング開催のサポートなども依頼に基づき承ります。
❚ 3. 講習を提供する相手の見込みはあるか?(顧客ニーズ)
インストラクター資格を取得してコースを開催しようとしても、受講する人がいなければ意味がありません。
自身の職場のスタッフなど受講対象者とその見込み人数などが明確で、定期的にコース開催ができる土壌があればよいのですが、不明確なまま資格を取得しても、おそらく2年後の資格更新(指導従事歴に関する基準あり)をクリアできないでしょう。
また、ブレイブハートNAGOYAのような公募型でのコース開催はさらにハードルが高くなります。
独立型の講習提供者はお店を開業するのと同じことであり、ウェブサイトやSNS運用をはじめとした集客戦術も必要ですが、AHA-BLSインストラクターが指導できるコースだけが商品ではきっと思うようにいきません。
オリジナルコースや特定組織向けのクローズド講習などもあわせて開催しながらAHAコースを展開するなどの工夫が必要でしょう。
なお、ブレイブハートNAGOYAでは、コースの独立開催を見越したインストラクターの養成を行うことを基本としています。ブレイブハートNAGOYAに所属し、ブレイブハートNAGOYAが主催するコースの一部を担当するインストラクターの養成を公募で行う予定は現在ありません。
❚ 4. 必要な資源は確保できるか?
救命法コースを開催するうえでの大きな課題が資機材の確保です。
講習提供者として安定した事業を展開できるようになればやがて回収できる資機材購入費用ではありますが、年齢別のマネキンやAEDトレーナー、バッグマスク、映像音響機器などの機材を新たに一式揃えようとすれば数十万円の費用がかかります。職場組織保有の機材を公式に使用できる環境がある方なら別ですが、個人で揃えるには大きな出費です。
対価を得て行うビジネスたる講習ですから、消防機関等の機材無償貸出制度は使えませんし、専門業者の資機材短期レンタルを利用してもそれなりの費用はかかります。AHAコースではCPRスキルのフィードバック装置の使用が必須であることも注意が必要です。
資機材とともに、教材の購入費用も万単位でかかります。
インストラクター用マニュアル類のほか、指導するコースのテキストや映像教材も必要となり、それらはガイドライン改訂の度に購入・更新が必要です。
また、職場の施設等を利用して講習を開催するのではなく、施設を借用して講習を開催する場合であれば、講習開催毎に費用がかかりますし、施設の予約・確保も必要です。
名古屋地区の民間の貸会議室は1日で2万円超の施設も多いほか、公営の安価な施設は受講料を徴収する催しは利用不可であるなど、講習場所の確保にも苦労が伴います。
施設を借用して講習を開催しようと考えている場合、現実に借用できる施設があるかも、あらかじめ確認が必要です。
❚ 指導者としての責任
独立してAHAコースを開催するということは、AHA公式の資格カードにスキル認証を行ったインストラクターの氏名が記載されるということでもあります。
コースを修了した受講者のスキルを、AHAの基準に基づき、自身の名において認証する。当該受講者がその後の実務で傷病者に提供するケアの品質に責任を負うということでもあります。
AHA-BLSインストラクターは、看護師等の医療従事者をはじめ、質の高いBLSを職務上必要とする人たちのトレーニングを提供します。
そのような人たちは、蘇生ガイドラインや救急蘇生法の指針、各種法令などに基づくケアを妥当な水準で傷病者に提供できず、傷病者が死亡した場合等には訴訟に発展するおそれもあり、その際には自身が提供したトレーニングの内容や品質等について、疎明書類を添えて証言をしなければならない場合などもあるかもしれません。
その不出来の要因が、トレーニング内で指導者が教授した内容の誤りにあるとしたら、指導者にも一定の責任があると言わざるを得ないでしょう。
誰かの生命や人生等を救うという成果をもたらす救命法分野の教育提供。
そこには大きな責任も発生します。
常に「正しい」とされる教育を提供できるために必要な自己研さん。
いざというときにはその正当性を証言できるだけの根拠と品質。
これらを負ってでもインストラクターとして活動する覚悟はお持ちでしょうか。
❚ それでもインストラクターである理由
ここまでお読みくださった方は、「自分には無理かもしれない」と思っていらっしゃるかもしれませんが、ご自身のこれまでを振り返ってみてください。
医療関係職種であれば、その資格を有するまで、そして職に従事してからも多大な時間や苦労、費用をかけてきたはずですし、非医療職でもこのページをご覧頂いている方は、これまで相当の覚悟をもって職務に従事された方でしょう。「そうだなぁ…」と思った方で、上記4点のビジョンが明確であれば、きっとうまくインストラクターとしての道を進むことができるはずです。
人を救う立場として、自身の救助スキルを高め、直接的な救助を行うこともできますが、直接的に救うことができる人数や範囲には限りがあります。
インストラクターとして活動することは、間接的な救助を行うことといえます。
自身の知見を活かし、たくさんの受講者のスキルを向上させる。
その受講者たちが各自のフィールドで質の高い救助を行い、多くの人を救う。
自身で直接的な救助を行うよりも、将来多くの人を救うことができるかもしれません。
救った傷病者から直接的に感謝の言葉を聞くことができるわけではありませんが、その人を助けた人、自身の教え子といえる方々から成果を聞くことはできるかもしれません。
このような方法で誰かの"Life"を救うことに意義を感じた方の今後の活躍を、ブレイブハートNAGOYAは精一杯サポートします。
AHA公式インストラクターとしての道を歩もうと覚悟を持たれた方は、より詳細な説明をご覧ください。